寿々方(すずかた)江戸がたり
江戸しぐさ

●「江戸しぐさ」とは
江戸商人のリーダーたちが江戸を住みよくするために考え出した思想や身のこなしが、
「江戸しぐさ」です。
幕末の外国人たちが目を見張った人間文化が江戸の町に、日本にはあったのです。
この素晴らしい誇るべき「江戸しぐさ」が21世紀の日本によみがえるとき、
日本は本当に美しい国として世界から尊敬されるのではないでしょうか。

NPO法人 江戸しぐさ正会員



●主な「江戸しぐさ」
(監修: 江戸しぐさかたりべの会主宰 越川禮子 / 楽描き: 寿々方)

素敵な「江戸しぐさ」の例

肩引き
人ごみの中で向こうから来た人とぶつかったり、右に左にオットットと
まごまごしたりしていませんか?
そんな時、互いに右肩を引いて胸と胸を合わせた格好でスマートにすれ違いましょう。

傘かしげ
雨の日、傘をさした人同士がすれ違う時、たがいに傘を外側へ
少しかた向ける動作です。
雨のしずくを相手にかけないこと、傘がぶつかるのを防ぐこころです。

こぶし腰浮かせ
電車の中で両側を空けて腰かけている人が居ます。
人が乗って来たら、すぐにこぶし分腰を浮かせて横につめれば、
人ひとりが腰かけられる空間が出来ます。
お詰め下さいませんかといわれる前に、こぶし一つの思いやりです。

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格好の悪いしぐさの例

とおせんぼしぐさ
狭い道で横一列に三人ぐらい並んで、しかものろのろとおしゃべりをしながら歩いています。
後ろから行く人にとってこの上もない迷惑です。ぜひ、やめてほしいことです。

横切りしぐさ
歩いている人、腰かけている人、立ち止まって絵を見る人などの前を横切って行くことは、
とても失礼なことです。後ろを通れなければ右手を出して「失礼!」の一言を添えれば、
素敵な「江戸しぐさ」です。

駕籠止めしぐさ
よそのお宅や会社、それがお取引先であったらなおさら、
自家用車やタクシーで玄関先に乗りつけてはいけません。
少し手前で降りて歩いて行きましょう。

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素敵な江戸のこころ

束の間のつきあい
喫茶店などで「ご相席でよろしいでしょうか?」という場合があります。
そんな時、後から座る人が、「すみません、ご一緒させていただきます」の一言をかけると、
相手も「どうぞどうぞ」と返してくれます。袖振り合うも多生の縁とやら、
ほんのちょっとの「束の間のおつきあい」も氣持ちの良いものになります。

有り難うしぐさ
「ありがとうございます」「ありがとうございました」
この違いは何だと思われますか?
「ございました」は過去形で、せっかくの人様とのご縁を
無きものとして断ち切ってしまうのです。
ですから江戸の人はいかなる時も、また良いおつきあいをという心で
「ありがとうございます」と言いました。

目の前の人は仏様
この世で出会う人は全て神仏の化身と考え、相手によって
差別をつけず尊重して丁寧に対応しました。
相手によって言葉を変えたり、威張るのは最低です。
井の中の蛙(かわず)/井中っぺいといわれました。

お心肥
派手にお化粧をしてブランド物で身を飾っても、頭は空っぽ、
自分のことしか考えない心貧しい人が増えています。
常に五感を磨いて心を豊かにし、周りに対して暖かいまなざしが向けられるように成長したいものです。

陽にとらえる
何事もプラス発想で「明元素(メイゲンソ)」(明るく元氣で素直で素敵)に物を受けとめましょう。
心がイキイキとして来ます。

尊異論
家族・友人・おなじみだけで小さく固まったり、赤の他人には排他的な考えは良くありません。
異なる意見にこそ耳を傾けるべきです。たとえ相手が年若だったり役職が下でも、
そういうことに差別を付けないで、
良いものは良いの考えで異なる意見を大切にしましょう。

草主人従
江戸の人は草や木、自然、森羅万象が「主人」で、人間はそれに従って
生かされていると考えていました。近代科学は自然を破壊し、温暖化が進んでいます。
何とかして歯止めをかけるよう、江戸のエコロジー思想に学びたいものです。